第2段階
学級担任の先生は、前日の働きかけの問題点を自覚し、翌日、生徒さん達に改めて次のように話しました。
「みなさんに書いてもらったクラス目標はそれぞれ特徴があって素敵でした。でも、先生の伝え方が不十分でした」
「昨日、みなさんはそれぞれクラス目標について自由に考えることができたと思います。これは探究学習などでは『発散』といって、まずはイメージを膨らませる活動です。しかし、イメージはどんどん膨らむので、これを最終的に一つのクラス目標にしていくことが必要です。これを『収束』といいます。」
「先生は、昨日の発散についても、これから進めていきたい収束についても、大切なことをしっかり考えられていませんでした。ごめんなさい。そこで、これからみなさんに話すことを踏まえて、申し訳ないけれども、もう一度考えてきてもらいたいです。」
「みなさんは探究学習で【課題の設定】というものを学んだことがあると思います。これはクラス目標を考えるときにも共通しています」
「”課題の設定”は、クラス目標を考えるための「方向性」を決めるものであり、非常に大切です。昨日書いてくれたものの中にも、この方向性に近い形はありました。例えば「〇〇なクラス」や「〇〇できるクラス」という書き方ですね。この〇〇に入る言葉が、”どんなクラスにしたいか”という方向性です。」
「そこで、みなさんにはまず「〇〇なクラス」や「〇〇できるクラス」という方向性を考えて書いてほしいと思います。 そして、みなさんがそれぞれ考えた方向性にとって大切だと思う「キーワード」を2つ考えて、こちらも紙に書いてください」
「方向性につながるキーワードは、最終的なクラス目標をつくり上げるための材料です。このキーワードを用意する活動は、探究学習では【情報の収集】といいましたね。みなさんには、方向性と2つのキーワードを紙に書いて明日持ってきてもらいたいと思います」
「明日は、みなさんが書いてきてくれた方向性とキーワードを使って、クラス目標を組み立てていきましょう。明日の『組み立て』は、探究学習では【整理・分析】にあたります。」
担任の先生は、最初の働きかけで足りなかった「方向性」について伝えています。
これを伝えることで、生徒さんたちは、響きや面白さといった「雰囲」ではなく、どんなクラスを目指すかという「内容」を優先して考えることができるようになります。
加えて、方向性とつながりを持つ2つのキーワードを考えてもらうことで、生徒さんそれぞれが”完成形”を持ちよることも回避できます。
第3段階
ここまでの活動を踏まえ、第3段階では、方向性やキーワードを組み合わせる活動が続いていきます。
次の日の朝、担任の先生は、生徒さん達が書いてきた紙を集めました。
昨日伝えた通り、方向性と2つのキーワードがそれぞれ書かれています。
方向性として多かったのは「仲の良いクラス」「助け合うクラス」「全力で取り組むクラス」で、これが上位3つでした。
キーワードは、「協力」「思いやり」「優しさ」「団結」「笑顔」「個性の尊重」「一生懸命」「真剣」「楽しい」「まとまり」が上位の10個でした。
担任の先生は、これらをデータにまとめ、ディスプレイに映し出せるようにしました。
まず方向性の上位3つを全体で共有し、それからキーワード上位の10個を共有しました。そして、6人くらいの班に分け、班に大きな紙と3色の付箋と黒色のペンを配りました。
「まず赤色の付箋に方向性を別々に書き出してください。青色の付箋にはキーワードを同じように別々に書き出してください。黄色の付箋には話し合いの途中で組み合わせた新しい言葉にしたいときや、追加のキーワードが必要になったときなどに使ってください。
白い紙を土台にして、付箋をグループにしたら黒色のペンで囲んでみましょう。この活動は探究学習では【整理・分析】と言いましたね。では活動を開始しましょう。」
実際に活動してみると、班によって特徴がありました。
似ているキーワードをまとめる班もあれば、どのキーワードの意味が一番広いか考える班もありました。また、方向性をベースにして、そこにキーワードをつなげる班もありました。
こうして、方向性とキーワードの付箋を組み合わせながら、生徒さん達はクラス目標についてのイメージを整理していったのです。
(次ページ:クラス目標が「自分ごと」に)
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