かえつ有明中・高等学校でサイエンス科・プロジェクト科の主任を務めておられる田中理紗先生のお話、第2弾です。今回はカリキュラムについてお聞きしました。
探究学習は「問い」をたてることから始まりますが、そうはいってもそれが難しい…とお悩みの先生方も多いのではないでしょうか。テーマや課題が決まらない。テーマが課題に生徒さんが興味を持てない。生徒さんをサポートする先生方のご負担も大きくなりがちなこの課題を、かえつ有明さんではどう解決しているのでしょうか。
特集「かえつ有明の探究をひもとく」
第1回:「安心・安全」あってこその探究
第2回:探究テーマが見つかる環境の整え方 ←今回はここ
第3回:テーマは自由?継続性は重要?
第4回:学び方は自分たちで決める!高校新クラス
サイエンス科・プロジェクト科で探究型授業の土台を作る
――今回はまず、かえつ有明さんの「探究」の進め方についてお話いただけますか?
かえつ有明中・高等学校 田中理紗先生(以下、田中先生):
わかりました。本校では、探究に取り組むための教科として中学校では「サイエンス科」、高校では「プロジェクト科」というオリジナル教科を設定しています。
私たちは、学んだり探究したり考えたりするためには共通して必要なスキルやマインドがあると考えています。たとえば私が担当している英語の授業で探究を取り入れる場合、生徒にはディスカッションやプレゼンテーションをしてもらうことになりますが、それは社会科の探究や理科の探究でも同様ですよね。ですから、探究の「ディスカッションする」「プレゼンテーションする」といったスキルの部分を抽出してサイエンス科の授業の中でトレーニングするという設計になっています。
――生徒さんが「サイエンス科」で学んだことを使えるようになれば、探究型の授業を実践しやすくなりますね!
田中先生:
はい。私たちはどの教科でも探究型の授業をやっていきたいというコンセプトを持っていますので、「サイエンス科」「プロジェクト科」はそのための土台作りになります。
中3になる頃にはそれぞれの中に探究したいテーマができてくる
――サイエンス科・プロジェクト科の中で、生徒さんが探究テーマを見つけるためのサポートはどのようにしておられますか?
田中先生:
中学のサイエンス科では、最初の2年間は基本的には教員がテーマを決めています。たとえば今年の中学1年生は、とあるお弁当会社さんとコラボをさせていただいてお弁当の企画・開発をするというプロジェクトに取り組んでいるのですが、これはアイディア出しというスキルのトレーニングに「お弁当を提案する」というコンテンツを乗せていく感じなんですね。スキルを学ぶという目的がありますので、テーマに関しては(子どもたちの発案ではなく)私たち大人側が提供する形で進めています。
これが中学3年~高校の段階になりますと、私たちからテーマやコンテンツを提供するのではなく、自分たちで探究したいテーマを選ぶ形に変わっていきます。中学に入ってから2年間の積み重ねがありますので、中3になる頃には子どもたちの中にはすでにそれぞれに探究したいテーマができているんですね。ですので、探究のテーマ設定が問題になることはあまりないように思います。
――探究のテーマ設定が問題になることはあまりない、という学校さんはなかなかないと思います。ところで、なぜ「2年間」なのでしょうか。
田中先生:
ここまでに18年近く探究の取り組みを続けてくる中で、生徒たちは中学3年生になる頃には自分たちの中にやりたいことが本当にたくさんある状態になっているとわかったことが理由としては大きいかもしれません。あとは、私たち教員としても(生徒がテーマを設定して探究を始める前に)伝えたいスキルやマインドが結構たくさんありますので、結果として2年間かかっているというところもありますね。
――つまり、「2年間」が絶対というわけではないのですね。
田中先生:
ないです。本校ではカリキュラムもコンテンツに関しても毎年作り直しますので。
――え!毎年作り直すのですか?
田中先生:
そうなんです。毎年、4月の時点ではカリキュラムが無いに等しい状態からスタートします、
次ページ:「先生と生徒の組み合わせからベストなカリキュラムを考える」
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