手法の解説:KJ法

今回、先生は「KJ法」を元にした情報整理を行いました。

KJ法を用いることで、生徒さん達からあがってきたたくさんの情報の中に、どのような関係性(類似、包含、対立など)があるのかが考えられ、バラバラだった情報が一定の繋がりをもった集合体になっていきます(もちろん班によって”集合体”の姿は異なっていますが、それは唯一解がないためであり、特におかしなことではありません)。

学級担任の先生はここで、班のメンバーで話し合って得られた集合体の姿それぞれにストーリー性があり、異なる価値を持っていることを強調しておくと、話し合いは結果(リザルト)だけではなく、過程(プロセス)も大切であることを伝えることができます。

探究の4つのプロセスの一つである【整理・分析】のためのツールは、今回のKJ法以外にもたくさんあります。

詳しくは「探究テクニック」をご覧ください(※誘導)

第4段階

担任の先生は、各班が作った関係図を元にして、クラス目標の完成形を考えてもらうことにしました。

「いよいよ、ここまでの活動を踏まえて、クラス目標を形にしましょう。これは探究学習では【まとめ・表現】というプロセスになりますね。

みなさんの班で作った方向性とキーワードの関係図から、どのようなクラス目標が考えられますか、短い言葉にまとめてみましょう。そして、それをグループの中で話し合って1つにしてみてください。」

こうして各班から1つずつあがってきたクラス目標を順番に発表(プレゼン)してもらいました。そのとき、どうして自分の班ではそのクラス目標になったのか、話し合いの過程や決め手となった理由なども発表(プレゼン)してもらいました。

学級担任は、各班のクラス目標を黒板に書き出します。そして、多数決を行いました。こうして、このクラスの目標は決まりました。


まとめ

いかがでしょうか。

このように丁寧な手順を踏むと、クラス目標はみんなでつくり上げたものだという意識が生まれ、クラス目標を自分ごととしてとらえていけるようになります。

また、このような探究のプロセスを念頭においた話し合いを行うと、クラス目標が何になったか(What)よりも、クラス目標はどのような過程で決まったか(How)や、そのクラス目標の形になった理由(Why)が印象に残ります

今回のクラス目標の話し合いのように、普段から何かを決めるときに過程や理由を大切にしておくと、ちょっとした話し合いでも感情や勢いではなく、理性的・論理的に考えるくせがつくので、決めごとについてのトラブルを軽減することができると思います。

このように、探究学習での経験や身に付けたテクニックをホームルーム等での話合い活動に生かすことは、理性的な合意形成を実現する鍵となるのです。


注記

  • 学習指導要領では「探究のプロセス」を【課題の設定】【情報の収集】【整理・分析】【まとめ・表現】の4つに分けて説明しています。

課題の設定 
体験活動などを通して、課題を設定し課題意識をもつ

情報の収集 
必要な情報を取り出したり収集したりする

整理・分析 
収集した情報を、整理したり分析したりして思考する

まとめ・表現 
気付きや発見、自分の考えなどをまとめ、判断し、表現する

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斉藤健

斉藤健

自修館中等教育学校教諭として探究教育を先駆けて実践。早稲田大学系属早稲田渋谷シンガポール校、シンガポール日本人学校中等部など教諭を経て、現在ビエンチャン日本語補習授業校の教員、如水館バンコク高等部のオンライン講師、iU(情報経営イノベーション専門職大学)客員教授。主な著書に、探究型教材『FUTURE』小学生版、中学生版Vol.1・Vol.2・Vol.3:STEAMがある。スタディサプリ探究講座(興味研究ワークBOOK/課題発見ワークBOOK)の制作にも携わる。

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